夕食後、奥の部屋でアンパンマンをネットで観始めたウタだったが、ちょっと怖そうなシーンがあると独りでは観られない小心者。アンパンマンのどこに怖いシーンがあるというのか...
「ラクーーー、おいでーーー!一緒に観よ~~!」と奥から呼んでいる。
「バアバとお風呂だよー!」
「ゆう、おいで~~~!」
「ゴハンの片付け中ーー!」
「ジィジは~?」
「こっちでテレビ観てるよーー!」
「ジィジ、おいでーー!」
キム・ヨンジャが朗々と美空ひばりを歌うのを聞いていた父が、その途端リモコンでTVを消して立ち上がると、そのまま奥の部屋へと向かったのを見て驚いた。
夕食の支度中にギャーギャーうるさいラクに対して「うるさいっ!!」と大声で怒鳴って泣かせたのに、夕食時には手厚くフォローしていた姿も目撃されていたし、どうやら我々の出発を間近に控えて最後の孫孝行をしているようだ。
私はウタが躊躇なくジィジを呼んだことが嬉しかった。残念ながら呼ばれたのは家族の中で最後だったが(それは容易に想像できた)、一緒にアンパンマンを観ようと父を誘ってくれたウタに、娘として手を合わせたくなった。
完全無欠なスーパー外弁慶の父は、外ではある程度人気者なのかもしれないが、家族にとっては非常に扱いにくい存在だ。子供とにこやかに遊んだり、子供の目線で話しかけたり、ましてや子どもの立場に立って考えたりはしない。できない。いやしない。おちゃらけて見せたり、鉄砲で撃たれるフリもしない。そんな父に子ザル達がなつかないとしたら、それは必然であってどうにも出来ないと思っていた。父のネガティブな言動をポジティブに子ザル達に説明することはあっても、好きになるよう無理強いするのは嫌だった。そんなことしても双方ともに迷惑だろう。
だからこそ、子ザル達が自分からジィジにお近づきになっている姿を見ると嬉しい。
願わくば、これから先も2人がジィジに対して寛大な評価をしてくれるといいと思う。特にウタは男同士でもあり、ジィジとはま逆の性格だから、もしかしたら成長しても苦手意識なく接することができるかもしれない。
そして、そうなるよう願いつつ私はジィジをポジティブに孫たちに印象付けるという水面下での誘導作戦を続けていかねばならないだろう。この娘心に父は感謝してくれるだろうか。いやしない。更にはもし父がコレを読んだら、さぞかしブスッとすることだろう...
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