一人減って3人家族になって半月。
潤の出発前の心配事と言えば、ウタのことであった。
一つには、男同士、サッカーとドラゴンボールカードゲームとゲーセンという共通の楽しみを共有する者同士、ラクと私の理解の及ばない「絆」があるだろうと思い、潤が旅だった後のウタのことが心配だった。潤のように体力勝負の遊びは出来ないし、ゲーセンも嫌いだから連れて行かないし、サッカーも教えられないときたら、私の存在などウタにとってあって無いも同然ではないかと。
そして2つ目。これまでウタと私の間の緩和剤として存在した潤の不在で、私達親子がどうなるか。潤が間にいなくてウタとうまくやっていけるのか、ウタが心を閉ざして積み木を崩したらどうしようとか考えていた。
が、しかし(潤よ、ここからよく聞きたまえ)。
1つ目の心配事については、ウタは気が向けば外に出てサッカーボールをちょっと蹴ったり、学校の放課後教室でサッカーをやる時は参加したり、週末に友達にサッカーを教えたり(教えられるのか??)して、細々とだがマイペースにサッカーとお付き合いを続けている。ゲーセンは1回も行っていないが、行けなくても別に問題ないという。ドラゴンボールは毎週バッチリ録画してTVで観ている。おんぶや抱っこもしてほしい時は私が頑張っていて、外見上は別に満たされていないようには見えない。
2つ目の心配事についてだが、険悪になった時に他に頼れる相手がいないおかげで、私とウタはお互いにちょっとずつ気を使い、優しくなり、尊重して、良い距離感を保つようになった。驚くべきことに、自然とそうなった。冗談じゃなく、この2週間、ウタをほとんど怒っていないし、ウタも私には怒らない(ラクには相変わらず手厳しい)。
ウタの態度ややっていることが気に入らなくても、その場で強く怒っても、もう誰もフォローしてくれる人はいない。「あとはヨロシク」的なことが出来ない。そして、ウタも言うのだ、「大丈夫、自分でちゃんとできるから。自分のペースでやらせて。」と。
本当はできていない。ちゃんとは。でも、やる気は見られないでも、ない。。。
なので、ウルサイ母親はやめた。片親生活となり、仕事・家事・育児を一人で受け持ちつつ、そのうえ子供と関係が悪かったらやってられない。私は自分の人生のクオリティを保つために、そしてお互いがお互いしかいない3人生活の中で、3人ができるだけ心穏やかに楽しくいられる空間を求めて、自ら”非完璧主義”になったのだ。
ダメだよと言っても私の帰宅までにたらふくオヤツを食べるウタは、当然だが殆どの場合夕食が入らない。以前はそれが許せずにケンカになっていたが、今はさっさと片づけて「明日の朝食べて行ってよ~。」と言えば、「うん、ありがと~。」と返ってくる。そして文句も言わず、前日の残りを食べて登校している(時にはそれが翌日のオヤツになったりもしている)。
更には。満腹になると襲ってくる睡魔に勝てず、ソファでうたた寝するのが常のウタを、以前なら風呂!歯磨き!せめて足洗え!と怒鳴っていたが、今ではパジャマに着替えさせて歯磨きもしてやり、そのままベッドルームへお見送り、でおしまい。汚い足のまま寝かせられないと頑張って、ウタの睡魔という見えない敵と戦っていた以前の私はどこへ行ったのか?何を、あんなに息まいていたのだろうか?
唯一の大人として家を支えていくにあたり、不要なもの、必須でないものは、潔く捨てることにした。シンプルに、楽に。掃除はシルバー人材サービスさんに2週間に1度来てもらう。無理のない範囲で、でも出来合いのお惣菜でない夕食を作るよう心掛ける。当然、時々「これだけ?」と無邪気にラクが聞くが、「うん、これが精いっぱい。」である。
5時までに仕事を終わらせ、7時までには買い物をして家に帰る。出来るときはオヤツの代わりのおにぎりを作っておく。出来る範囲で家事をこなし、子供たちに手伝いを強要してまで頑張らない。
うるさくなくなったら、逆に朝もサクサク起きてサクサク学校に行くし、むしろ手がかからなくなっている。有り難いので、更に優しくなると、向こうも優しく接してくれる、という願ったり叶ったり状態。
ウザがられるほどハグをして、オエーっとされるほど可愛がり、2人が満たされた顔で登校し、就寝すれば、それが全て。そこにつながる余力と、心の平和を自分に残すことが全て。
なので潤、帰国したら以下のことを守りなさい。できなければアルゼンチンへ帰りなさい。
その1.家の中で、子供たちが起きている間はケータイゲーム&ケータイ動画、全面禁止
その2.ゲーセンは月に1回まで
その3.あちこちでモノを買い与えるな(特にゲーム)
その4.自分勝手にプリプリ怒って家族に迷惑をかけない。大人になれ。
その5.二言目には「だって仕事だから仕方ないじゃん」と言わない。それはプロとは言えない。
その6.事前に決められた家事以外もやってほしい。
以上です。誓約書、用意しとくからヨロシク。
追記:これを読んだ皆さん、潤に対して鬼のようだと思ったかもしれない潤のご家族の皆さん、ごめんなさい。本音は本音ですが、潤はそうは言っても、”頼んだことは絶対してくれる”し、”頼んでないことも気づけばしてくれる”心優しい夫であり、子供たちを愛してやまない子煩悩父さんです。
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